加賀友禅とは
加賀友禅は江戸元禄の頃、宮崎友禅斎によって始められたと言われ、現在まで引き継がれてきた伝統工芸です。江戸時代の加賀友禅は武士階級や豪商の婦人たちの晴れ着で、庶民が着れるようなものではありませんでした。京友禅の華美さに比べると加賀友禅は武家風の落ち着きがあり、育んできた風土などが彩色や柄などに大きく影響しています。
加賀友禅の特徴
「加賀友禅」の特徴は大きく分けて5つあります。
- ・絵画調で自然や古典をモチーフにしている
- ・「臙脂(えんじ)・黄土・藍・草・古代紫」の加賀五彩を基調としている
- ・「虫食い」の技法が用いられている
(虫食い…自然の葉が虫に食べられているように、葉の模様にも同じく虫が食べたようにする彩色) - ・「先ぼかし」の技法が用いられている (先ぼかし…外側から内側に向かってだんだん薄くなるような彩色)
- ・金加工や刺繍は基本的に用いない
加賀友禅の工程
加賀友禅はたくさんの工程から成っており、それぞれの工程で職人がいます。
小下図→図案→仮絵羽→下絵→糊置→地入れ→彩色→下蒸し→中埋め→地染め→本蒸し→水元→本仕立て→完成となります。
私たち作家(模様師)が担当するのは、
- ・紙に図案を描く (小下図・図案)
- ・図案を着物に写し取る。(下絵)
- ・糊が置かれた着物に彩色をする。(彩色)
と大きく三つの作業があります。
仮絵羽
幅約37cm、長さ約13mの反物から着物は作られます。白生地の反物を仕立屋さんに持っていき、お客様のサイズの着物の形に仮縫いをしてもらいます。先に着物のかたちにしてしまうことで、縫い目で模様がずれないようになります。
小下図・図案
約1/10サイズで着物の雛形に模様のイメージを描きます。これを小下図と言い、小下図を元に、着物の模様を実寸で紙に描いていきます。模様師の仕事の中で一番時間のかかる作業です。
下絵
図案を描いた紙の上に生地を置き、下から照明器具等で照らし、模様を描いていきます。この時、露草のしぼり汁を使って描いていきます。この汁は水で洗うと消えてしまうため、水元の際に糊と一緒に洗い流されます。
糊置
下絵の線の上に「糊」を置いていきます。生クリームを出すときに使うしぼりのような道具のずっと小さいものを使います。この「糊」の線によって僅かな盛り上がりが出来、生地の裏まで食い込むことで防染になります。そして、より緻密な彩色ができるようになります。糊の素材はもち米と糠(ぬか)で出来たものと天然のゴムで出来たものの2種類を制作するものによって分けて使用しています。
彩色
柄の部分に色を挿していきます。使う染料の色は工房によって特徴があります。工房久恒では10色の原色の中から色を調合して、彩色しています。
地染め
地色を染めているところです。地染めは専門の職人さんにお願いします。加賀友禅は模様の彩色を先にして、その部分は糊で伏せて最後に地染めをします。
水元
工場内に人口で作った川で生地を洗います。昔は自然の川で行われ、「友禅流し」として有名です。水元(みずもと)によって染まっていない余分な色素や薬品はもちろん、防染糊も完全に流し落とします。余分な染料を落とすためには冷水がよく、また不純物を含んだ水では染料と化合して変色することがあるため、きれいな水を使います。
本仕立て
染め上がった生地は、縫い合わせの部分で模様がずれないように絵羽(えば)模様を合わせて本仕立(ほんじたて)をして完成です。